日本では、離婚後の共同親権が認められていません。
まず、親権とは、未成年である子供を監護・教育し、その財産を管理し、その子供の代理人として法律行為をする権利や義務のことをいいます。
子供の両親が婚姻中で健在であれば、その夫婦が共同で親権を行使し、子供の監護・教育を行うことから、夫婦二人が親権者ということになります。
しかし、離婚が成立した場合においては、離婚した両親が親権を共同で行使することは無理であるといえます。
そのため、離婚した場合は、子供の親権者を母親か父親かのどちらか一方に定めることになります。
日本では、離婚後の共同親権が認められていません。
そのため、離婚後は必ずどちらか一方の単独親権にする必要があることから、どちらの親も子供の親権者になることを希望している場合においては、親権者をすぐには決められないということがあります。
その場合、子供の親権を二人の親が取り合うようになってしまい、子供を巻き込んだ熾烈な離婚トラブルに発展するということもあるようです。
基本としてまずは夫婦が話し合いによって親権者を決定する
離婚の際に子供の親権者指定をする場合、基本としてまずは夫婦が話し合いによって親権者を決定する方法が取られます。
このように話し合いで離婚条件等を決定する離婚の形式を協議離婚といい、親権者の決定もこの離婚条件の中に含まれています。
ここでの話し合いの結果、双方が納得して親権者をどちらにするか決めることができたら、その内容で離婚届を作成することができます。
そして、この離婚届を役所に提出すれば、子供の親権者が決定したと同時に、離婚も成立します。
話し合いだけでは子供の親権者が決まらないというケースは?
ただ、前述の通り、夫婦のどちらも親権を強く希望している場合では、話し合いだけでは子供の親権者が決まらないというケースがあります。
このようなケースで子供の親権者を決めるには、家庭裁判所において、家事事件の一種である離婚調停を申し立てる必要が出てきます。
離婚調停では、家庭裁判所の調停委員が夫婦の間に入って話し合いを進めてくれることから、夫婦間で折り合いがつくということもあります。
そして、どちらかの親が相手方に子供の親権を譲るということになれば、調停が成立することになります。
ただ、この離婚調停では、当事者に子供の親権を譲るように強制することはできませんので、もし、どちらの親も親権を譲らなかったという場合においては親権者を決めることができず、その調停は不成立となります。
この場合、人事訴訟事件の一種である離婚訴訟を起こし、その訴訟によって子供の親権者を決定することになります。
このような離婚訴訟の際、裁判所は、夫婦双方の事事情、子供の事情等を考慮して、父親と母親のどちらが親権者になるのが子供の利益に適合するかという観点から親権者となるのにふさわしい者を判断します。
その際、子供の年齢は、まず、母性優先の原則という判断ポイントの一つの要素とされています。
子供の健やかな発育のために、まだ母性が必要な年齢であると判断
子供の年齢が乳幼児である場合、子供の健やかな発育のために、まだ母性が必要な年齢であると判断され、母親が親権者になることが多いとされています。
ただ、最近では、「母性」とは必ずしも母親によるというものではないとされることも増えてきているようです。
「母性」とは、あくまでこれまで子育てをしてきた者による愛情という意味であるとも解釈されてきており、実際に乳幼児であっても父親を親権者とした裁判例もあるとのことです。
また、子供の年齢は子供の事情という判断ポイントの一つの要素とされています。
上記のような乳幼児、または未就学児においては一日中、子供の面倒を見なければならないため、母親が親権者とされるということが多くなっています。
その一方、子供が小学生、中学生と大きくなっていけば、乳幼児や未就学児のように一日中面倒を見るという必要はなくなります。
また、これぐらいの年齢になれば、子供の意思がはっきりしてきます。
このような子供の意思やその他の子供の事情も加味されて、親権者が決められるようになります。
このように、子供の年齢と親権者の関係では、子供が幼く、特に乳幼児の年齢である場合には母親が親権者となるケースが多いといえるでしょう。
ただ、そもそも母親自身が子供の利益に適合しないという場合においては、母親ではなく父親が親権者になります。
子供の年齢は、あくまでも親権者を決定する際の考慮要素の一つに過ぎないということを覚えておきましょう。