一度決めた親権者を変更したいというケースは??
婚姻中の夫婦に未成年の子供がいる場合、子供は両親の共同親権のもとで育てられていますが、離婚となった場合には、父と母のどちらを親権者にするか必ず決めておく必要があります。
この父と母のどちらを親権者にするかについては、夫婦二人の話し合いで決定することができますが、様々な事情が発生した場合、この一度決めた親権者を変更したいというケースも出てくると思います。
この親権者を変更する方法は、実は法律で決まっています。
そのため、元夫婦間の話し合いのみでは親権は変更できません。
離婚をする際、親権を決めることは夫婦間の話し合いで決められました。
しかし、離婚後に親権を変更する場合は、夫婦間の話し合いのみでは不可能となっているので、もし仮に「子供が10歳になったら親権者を母親から父親に変更する」と離婚協議書に記載しておいたとしても、親権の変更はできなくなっているのです。
親権の変更は、親権者変更調停という手続きを取ることによって可能となります。
法律上、離婚する際に決めた親権を変更するにあたっては家庭裁判所の調停・審判をしなければならず、親権者変更調停とは、その離婚時に決めた親権を変更するために行う調停となっています。
ただ、もしこの親権者変更調停を進めていくにあたり、親権変更について父母間で話がついたとしても、他の調停とは違って、家庭裁判所調査官が子供の福祉を判断するために調査を行うようになります。
家庭裁判所調査官は、裁判所の命令を受けて、子供の現状調査などを行う調査官です。
子供は父母間の親権争いに巻き込まれてしまうと、長期間にわたって深刻な心の傷を受けることから、さらに一度決めた親権を変更するという場合には、特に子供の気持ちや環境に配慮して判断する必要があります。
その判断のためには子供の現状調査が必要不可欠となり、家庭裁判所調査官はこの調査のために、父母や子供と直接会ったり、学校訪問や家庭訪問などを行います。
親権の変更が認められるという場合は限られたものとなっています。
ただ、この親権者変更調停の申し立てを実際に行ったとしても、親権の変更が認められるという場合は限られたものとなっています。
その具体的なケースとしては、まず、親権者が子供を虐待しているケースです。
離婚したときは子供を引き取りたいと思ったものの、実際に暮らしてみたら経済的に大変などの理由から子供が邪魔になり、虐待をするというようなケースがあり、このような場合は親権変更が認められる時があります。
次に、親権者が育児放棄をしているケースです。
親権者が幼い子供をおいて頻繫に出かけていたり、身の回りの世話をしないなどが確認されて、育児を放棄しているとみなされた場合には、親権の変更が認められる時があります。
次に、親権者が海外に出向などによって長期滞在するという事になった場合、その現地に育児が可能な環境がなければ、親権の変更が認められる時があります。
次に、親権者が離婚後に病気になって長期入院となってしまい、育児をできなくなってしまった場合は、親権の変更が認められる時があります。
最後に、子供が親権者でない親による養育を強く希望しているというケースです。
離婚時に子供が幼かった場合、親権者は周囲の状況のみで判断して決めることになります。
しかし、子供が成長して、現在の親権者ではない親のところに行きたいと強く訴える場合がありますので、その際、子供の年齢が15歳以上であれば自分自身で家庭裁判所に意見を伝えることが可能です。
また、もし子供の年齢が15歳未満であったとしてもその意見が考慮されることもあります。
このように、親権の変更を実際に行うにはきちんとした準備と手続きが必要であり、また、その変更が可能なケースも限られています。
そのため、自身のケースが親権変更可能なケースに当てはまらない場合は、まず、子供との面接交渉権を得るというところからスタートするのも良いかもしれません。